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備忘録(29)一言居士の二枚舌

2024.09.30 Mon

今回の自民党総裁選を前にして、河野太郎さんは石破茂さんについて「一言居士」と評したそうです。一言居士とは、何事についても自分の意見をひとこと言わないと気のすまない人ですが、石破さんのその一言は、これまで筋が通っていました。たとえば、今回の総裁選に向けた日本記者クラブの会見でも、小泉進次郎さんが首相になったら、できるだけ早く解散すると主張したのに対して、次のように述べました。

 

「国民のみなさまが判断していただける材料を提供するのは、政府の責任であり新しい総理の責任だ。本会議は一方通行でやりとりはない。本当のやりとりは、予算委員会と思う。国民のみなさまがご判断できる材料を提供するのは、政府与党の責任だ」

 

まさに憲政の常道というか、筋論からいえば、国会での論戦を十分に戦わせて、他党との政治理念や政策の違いを鮮明にしたうえで、国民に信を問う総選挙に臨むというのが新首相の姿勢であり、さすが石破さんだと思わせました。

 

ところが、自民党総裁に選ばれたら、まだ首相にも指名されていないのに、早期解散の意向を固めたというのですから、これでは一言居士の二枚舌ではありませんか。

 

早期解散すれば、予算委員会で、裏金問題、統一教会問題などで野党から追及されることはないし、小選挙区で「裏金議員」を落とすための野党連携の余地を少なくすることもできるでしょう。しかし、これは党利党略であって、石破さんの存在理由でもあった「筋を通した議論」からは大きくはずれてしまいます。政治はきれいごとではないのでしょうが、総裁・首相の第一歩が公約違反というのは、なんとも哀しいですね。

 

石破さんは、日本記者クラブでの討論会で、次のようにも語っています。

 

「解散すれば衆院議員がいなくなるということだ。世界情勢がどうなるかわからない時に、すぐに解散します、という言い方はしない。解散していい状況が整っているかということを判断する、ということであり、私は国民に対するおそれの念は常に持っていたい」

 

いまの世界情勢は解散を止める理由にはならないかもしれませんが、水害に見舞われた能登半島への国としての対策は大丈夫なのか、補正予算を組む必要はないのか、などを国会で吟味しなければ、石破さんが述べてきた「解散の条件」が整っている、ということにはならないと思います。

 

なお、今回の総裁選で、高市早苗さんではなく石破さんを総裁に選んだ自民党の「バランス感覚」はたいしたものだと評価しています。多くの「裏金議員」の推薦を受け、首相になっても靖国参拝は続けると言う高市さんが首相になれば、裏金問題に対する国民の怒りは総選挙に色濃く反映されるでしょうし、中国や韓国など近隣諸国との緊張関係が高まれば国民の不安も増すと思ったからです。

 

「国民に対するおそれの念」があったからこそ自民とは石破さんを選んだわけで、石破さんも「おそれの念」を忘れないでほしいと思います。

 


この記事のコメント

  1. 徳光清子 より:

    「舌の根も乾かないうちに」とはこういうことを言うのですね。そのうち「豹変」と言う言葉も出てくるのではないですか?

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