備忘録(25)岸田首相の不出馬
岸田首相が総裁選への不出馬を表明したことで、自民党は、次の総裁選びで暗闘を繰り広げることになりそうです。裏金問題で、派閥の表向きの活動は目立たなくなったはずですが、自民党の総裁選は、なんといっても国会議員の票の奪い合いですから、旧派閥を含めて派閥の動きが活発になるのは確実だからです。
世論調査では、石破茂氏が首相候補として人気を集めています。次の首相は、黙っていても来年秋には衆院議員の任期が満了になるので、それまでに解散・総選挙に打って出る可能性が大です。となると、次の総裁・首相は「選挙の顔」ですから、人気のある人を総裁・首相に据えたのが得策だと思います。しかし、カネとポストで動く政治家が多いのは世の常ですから、世間の期待通りになるとは限りません。
米国では、バイデン大統領が次の大統領選への不出馬を表明したことで、民主党内は次の候補をめぐって、混乱するのかと思っていたら、ハリス副大統領でまたたくまにまとまりました。世論調査をみると、銃撃事件で勢いを増していたトランプ前大統領にハリス氏は追いつき、追い越す勢いになっています。民主党の議員や支持者のなかで、このままではトランプに勝てないという危機感がハリスでいくしかないという合意につながったのでしょう。
一方、日本の自民党では、次の総選挙も岸田でなければ勝てる、という読みがあるのでしょう。岸田首相は不出馬の会見で、「我こそは思う方は積極的に手を挙げて、真剣勝負の議論を戦わせてほしい」と語りましたが、政策論争で国会議員票が動くとは思えません。結局、派閥の領袖を含めた有力者が料亭で密談することで票が動き、「歴史は夜作られる」ことになるのでしょう。
いわば国民不在の選挙ですから、コップの中の嵐だと気にかけなければいいのですが、石破さんの動きがちょっと気になりました。超党派の議員とともに台湾を訪れ、頼清総統らと会談したことです。訪台すれば、中国との関係が悪化するのは百も承知でしょうから、個人の思想信条の行動としては立派なのですが、次の首相をめざそうという政治家がことさらに中国との緊張を高める行動を選ぶというのは、どうなのでしょうか。
いまの習近平政権の中国と親しくなるのが日本の道だとは思えませんが、米中対立の巻き添えや日中の政治家の意地の張り合いで日本が中国と戦争になるのは、なんとしても避けてほしいと思います。そのためには、日中のリーダーが信頼感は無理だとしても、パイプくらいは持っていてほしいと思います。石破さんにそれができるのか、今回の訪台で私は疑問符を抱きました。
(冒頭の写真は、8月14日、総裁選不出馬の会見をする岸田首相=首相官邸のHPから)
この記事のコメント
コメントする
前の記事へ | 次の記事へ |
石破さんへの見方、同感です。