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さる中国人識者の鋭い指摘:中国の民主主義への移行は避けて通れない壁と言う

2016.09.07 Wed
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さる中国人識者の鋭い指摘:中国の民主主義への移行は避けて通れない壁と言う

この程、角川新書で「中国の超えがたい九つの壁」という力作を読みました。著書は「沈才彬(ちんさいひん)」という中国人学者で、人生の前半を母国中国で暮らす一方、1977年頃から日本と縁が出来、1989年来日、爾来日本の研究所に勤務、多くの論考や報告を発表、多摩大学教授を経て、現同大のフェローの任にあり、また、(株) 中国ビジネス
研究所などの代表をしていると申します。1944年生との事ですから、私と同い年と言うことになります。

著者によれば、日本を追い越して、近年俄に世界第二位のGDPを誇るに至った中国ですが、その行く末に九つの壁があると言うのですから、論点は多岐に渡ります。それらを
ひとわたり知るには、原著に当たってもらうとして、ここでは焦点を絞って記すことにします。

*  大事なポイント まず、五代目の罠というとらえ方

ソ連は1917年のロシア革命で実質創始されましたが、途中の短命政権を除くと、レーニン、スターリン、フルシチョフ、ブレジネフ、ゴルバチョフの五代続き終焉、1991年に崩壊しました。私は自分が生きている間に、あの鉄壁を誇ったかに見えたソ連が崩壊しましたので、本当に驚きましたが、その訳や経緯を知る内、次第に納得し、これは、もう一つの共産党支配の大国である中国でもあり得ると思うようになりました。

すると、本著者も同様のことを「五代目の罠」として示唆しているのです。これには二度びっくりしましたが、我が意を得たりの感も得ました。

著者曰く、「では中国はどうであろうか。毛沢東からスタートして、鄧小平、江沢民、胡錦濤と続き、習近平で五代目に当たる。・・・現状から判断すれば、習近平の二期十年はこのまま続き、2023年までは・・・偶然だが、2023年は、中国建国から74年目と
となり、ソ連という国家の存続期間と並ぶことになる。・・・共産党政権五代目の罠をいかに突破するのか。このことは、世界ナンバーワンを目指す中国の行方を大きく左右することになる。仮にこの罠を突破できなければ、他の中所得国と同様に自国経済は停滞し、アメリカを上回ることなどただの夢物語になるだろう。・・・」

ここに、著者論旨の第一のポイントがあります。そして、可能性があった大国として、先進国になりかけながら、中進国に止まった典型例と言うことで、アルゼンチンが上げられていました。

一方、新興国から、中進国となり、先進国となって、遂に高所得国となるのは容易なことでないと申します。これまで知られているところでは、それはたった二例に止まっているとのこと、即ち韓国台湾と韓国です。著者曰く、これら二国は、独裁体制から、民主体制に転換して、見事高所得国に脱皮しました。こうした先例は重い経験則を語ります。

*  中国最大の弱点:共産党一党支配という価値観

こうしたことを踏まえた上で、著者「沈才彬」は中国最大の弱点は、「他国が共有することのできない共産党一党支配という価値観である」と明言しています。

ご当人が中国共産党員であるかどうかは不明ですが、現在の党の要人と親しくし、時折母国を訪ね、関係者と突っ込んだ意見や情報交換をしていることは間違い在りません。なのに、この大胆な言い切りには圧倒されます。

斯くて、九つの壁を論じつつも、「最大の壁は「中国共産党」と言っていいかもしれない。」とまで断言しているのです。

そして、対照的に、アメリカは実力を持ち、自由と民主主義の体制を確立・定着させ、且つ文化といったソフトパワーを有し、世界中の国々や地域がそれを共有し、実感し、享受できていると言うのです。

これに対し、中国の持つ一党支配という価値観は将に他国が共有出来ないものなのです。
しこうして、共産党一党支配体制から民主主義体制への移行は、さらなる成長を望む中国にとって避けて通ることのできない最大の挑戦となります。

それは相当長期に渉るものとなると予測しつつ、著者は「向こう十年間は中国にとって
正念場になる。」と言います。 私どもは、その隣国に暮らしているわけですが、著者の見解に基本的に賛同しつつも、大変な時代と地域に居住していることを、あらためて実感いたしますね。

 


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