「海のハンター展」で知る自然界の広がり
「海のハンター展」で知る自然界の広がり
生命は海に生まれ、今日では海陸空に亘る「種の豊富さと広がり」の繁栄を勝ち得ています。生命は地球誕生後十数億年経った約三十億年前頃に発祥、進化と拡大、変化を遂げ、約五億年前の古生代・カンブリア紀に至って、多種多様な生物による、凄まじい命の大爆発を生み出して来ました。
* 魚類の登場 それは顎を獲得するに至った
今回の国立科学博物館の展示によれば、そのカンブリア紀の末期に、脊椎動物の進化の所産として、遂に顎(あご)の在る魚が海に現れた由、海のハンターと言う切り口に焦点を当てた今展示の視角からすると、この「顎」とは実に重要な装置の由、なぜなら、顎が口に出来ると、それで魚類などは、獲物を捕まえ、呑み込み、喉の奥に連なる自身の消化管に送ることが可能となるからと言います。更に、歯が得られると、噛み砕くと言う道も開けてきますした。かように、顎とは将に画期的なものとの事です。
* 大型化
さて、強力な肉食魚の登場は、実にモンスターのような生き物を生み出して行ったようです。今回の展示で初めて知りましたが、古生代のデボン紀の三億八千万年前頃に現れた、「ダングルオステウス」と言う恐ろしい形相の魚類は、何と全長約十mもあった由。海中で浮力が働くとは言え、後世の恐竜に比せるような、その巨体には圧倒されました。ただ、その捕食動作は丸呑みであったと言います。
後年、約二億年の昔、中生代の三畳紀に現れた「ジョニサウルス」と言う巨大種は、恐竜のような名前がついているものの、実は魚竜の仲間で、全長約21mにも及んだと申します。陸上では早や恐竜が出現し始めた頃ですね。
ここで留意すべきは、進化が続くと更に大型化が進行するかというと、そう単純でもなく、新生代の約二千万年まえ前後に圧倒的な存在感を示した「メガロドン」と言う軟骨魚類(鮫の一種)は、全長約17mほどに止まりました。大型化とは、成長の所産だけで無く、かなり環境や偶然の影響を受けるようなのです。されど、この大きさは、鮫の系統としては史上最大で、且つ最強であったとされています。
* 食物連鎖の頂点は海域ごとに異なる
では、今日の海で、最強即ち、食物連鎖の頂点に立つ動物は何なのでしょう?これは結構難しい問いのようです。
さくっと言えば、それは海域ごとに異なると申します。
まず、浅海域(水深二百m以浅)では「ホホジロザメ」がそうだと申します。全長約6mほどの巨体ですが、もはや約二千万年前のメガロドンのような、べらぼうな大きさではありません。そういえば、米国映画の「ジョーズ」に出てきたのは、ホホジロザメでした。将に浅い海で、人も襲う怖い鮫なのです。
* もっと深い海が広がる外洋では?
そこでも矢張り鮫なのですが、種が違っていて、「ヨシキリザメ」という種がトップの由です。英名は、「blue shark」です。このことで、どこにでも怖い鮫の居ることが分かります。かような鮫のどう猛さと生存範囲の広さ故か、卵生であるのに、鮫は未だに滅びず、鮫という仲間として広く各海域で生き延びているのでしょう。
* 極域では?
でも極寒の海域ではどうでしょう。鮫は暖かい海は向いていそうですが、寒冷なところは苦手な感じがしますね。第一、そういう所には鮫はそもそも棲息していそうに在りません。
かくて、極域に参りますと、海域ではシャチが君臨している由です。シャチは哺乳類で鯨の仲間ですが、どう猛な肉食なのです。 更に極寒地の陸域では北極熊がいます。シャチと北極熊、ユニークな取り合わせですね。ならば、北極熊の居ない南極大陸では、誰が陸域の頂点に経つのでしょう。これはかねてからの疑問なのですが、今回の展示でも分からないままに終わりました。南半球にしかいないペンギンの仲間がその機能を果たすのでしょうか。でも、ペンギンは泳ぎが得意と言っても、飛べないのですから、猛禽類のような役割を果たすとは思えませんね。
* 水中を飛ぶ鳥がいる
生き物の世界には不思議なことがいっぱいありますが、この度の展示で知ったことと言えば、何と水中を羽ばたいて泳ぐ鳥がいる由、それは「ウトウ」と言うとの事です。と言っても鵜の仲間ではありません。ウミスズメ科に属する由です。何と海中を羽ばたいて素早く泳ぎ、カタクチイワシ、いかなご、イカ類を捕らえるとのことです。潜水は45秒ほどで、最深十mほど潜れると言います。生きるための進化とは、凄い能力まで獲得するのですね。
* 食べられない工夫:マンボウの丸呑み防止策とは?
掛かる防衛策には、毒や保護色、擬態など様々ありますが、傑作なの「マンボウ」の工夫です。マンボウは捕食者を避ける皮膚も棘もありません。実質唯一の方法は相手方に呑み込まれないように、ひたすら大きくなる事といいます。 斯くて、全長3.3m、体重2.5トンにもなると言いますから、圧倒されますね。この巨体で丸呑みを防ぐと言うわけです。実に愉快な、しかし必死の生存方法ですね。
* 人間もハンター
漁業や釣りをする人間は、最大のハンターかも知れません。
その人間や社会が海などの自然にお返ししているとも云えるのは、養殖でしょうか。
* 養殖
様々な養殖が試みられ、各魚種で相応の成功を納めて来ており、かなりの企業化が
成り立っていますが、水産日本が何十年のも困難を乗り越え。ようやく道を開きつつあるのは、「クロマグロ」と 「ニホンウナギ」の養殖でしょう。いずれも世界的なものと言えます。
前者は近畿大学が成功しつつあると言われ、画期的なのは2002年(平成14年)に至って、遂に、「子が親となり、また子を産み、それが育って親となる」という完全養殖を達成したことです。その後、更に企業化を成就、2013年に近大水産研究所と言う店を大阪と東京に出店するまでに漕ぎつげています。課題は量産と複数の取り組みによる産業化ですね。
後者は、国立研究開発法人「水産総合研究センター」によるアプローチで、この2010年完全養殖の成功に至った由、素晴らしいことと思います。更に企業化、そして産業化となれば多大な成果を生むことになりますが、その道のりはもっと大変なことでしょう。斯くなる発展を念じ、日本と世界への貢献を希うものです。
以上、多岐にわたり、ためになって、且つ元気の出る見学となりました。残暑の中ながら、値打ちがありました。
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