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備忘録(31)第2次トランプ政権にどう対応するのか

2024.11.14 Thu

数日前、知人や友人が集まる「勉強会」で、米国の大統領選について議論をしました。大きな論点になったのは、①なぜ米国民は再びトランプを選んだのか、②なぜメディアは事前にトランプ優勢を伝えなかったのか、③日本はどうする、という問題でした。

 

第1の米国民の意識については、①インフレに苦しんでいる国民に現政権のハリス候補は納得できる具体的な政策を打ち出せなかった、②若者層がガザ問題で虐殺を止められないバイデン・ハリス政権に失望した、③黒人、ラテン系、アジア系などマイノリティーの人たちにとって民主党が救いの党でなくなった、などの見方が出されました。

 

第2のメディアの事前報道については、世論調査でトランプ対ハリスの支持率が誤差の範囲だったので、読み切れなかった、という見方が出る一方、ニューヨークタイムズ紙はハリス陣営が苦しい状況にあることを書いて敗北をにおわせた、ワシントンポストが社説でハリス支持を出さなかったのはトランプ勝利を見越したから、などの見方が出ました。

 

第3の日本の対応については、石破首相とトランプ氏との「個人的な関係」は、期待できない、という見方が出ました。一言居士の石破氏は、ご無理ごもっともとトランプ氏にすり寄るようなことはできないだろうし、安定政権でない石破政権にトランプ氏が好意的になる必要がない、といった理由です。

 

この勉強会で、私が提起したのは、第3の日本の対応についてです。

 

メディアは首相と米大統領との「個人的な関係」を重視しているようですが、二国間の重要な問題を「個人的な関係」に矮小化してしまうおそれがあるのではないかと危惧します。中曽根首相(任期1982~1987)とレーガン大統領(1981~1988)との「ロン・ヤス時代」は、貿易摩擦で日米関係がもっとも悪かった時期です。小泉首相(2001~2006)とブッシュ大統領(1999~2008)との時代は、自衛隊陸上部隊をイラクに派兵し、「Boots on the ground」という米国の要請には答えましたが、米国の要請があれば軍隊を敵地に送る前例となりました。

 

安倍首相(第2次2012~2020)と第1次トランプ(2017~2020)との時代は、安保法制の改定で、米国の戦争に組み入れられる仕組みができました。また、米戦闘機の爆買いという前例は、ボーイングの経営危機を抱える現在では、ボーイング製の軍備の爆買いを迫られる不安があります。さらに、トランプ氏への個人的なお土産としか思えないカジノ法の成立と執行は、日本社会に賭博がもたらす不安を広げました。

 

トランプ政権が「米国一国主義」を前面に出して、日本に限らず欧州やアジアの同盟国に無理難題を押し付けてくることは目に見えていますが、米国が同盟国との協調よりも、自国の利益を優先するのなら、同盟国も自国の利益を押し出すしかありません。日本も「自国の防衛」を優先するなら、中国に対しても、イランを含む中東に対しても、「独自外交」を考えるべきでしょう。

 

こうした対応は、安全保障に限らず、国連の気候変動枠組み条約などの環境政策、APECやWTOなどの経済的な国際連携などについても、日本が米国追随ではない外交を展開する余地が広がる機会と考えるべきだと思います。そのヒントとなるのは、TPPへの対応です。第1次トランプ政権で米国がTPPから離脱したあと、日本は米国の復帰を期待するという建前を堅持しながら、TPPの枠組みを広げ、実効性のあるものにしてきました。TPPの中身については、議論がありますが、TPPモデルは、これからの日本外交の方策だと思います。米中対立は、「漁夫の利」を考えるのが日本の国益だと思います。

 

最後に、私が不安に感じているのは、米国社会のトランプ化に日本が追随することです。虚偽の情報で国民の不安を煽り、過激な言葉で「敵」を罵倒し、強権的な手法で「実行力」を誇示する政治を国民が容認するような社会に日本がなっていくのではないか、という不安です。

 

若い人たちが新聞やテレビよりも、YouTubeや「X」、インスタグラムなどで情報を得るようになったネット時代は、アルゴリズムが働き、情報が偏ることになります。ハリス氏は民主主義の危機を訴えましたが、トランプ氏も民主主義を取り戻すと訴えました。民主党支持者にとっては、トランプ氏の強権的な手法が反民主主義に映りますが、共和党支持者にとっては、ワシントンの官僚機構(ディープステート)に牛耳られている政治こそ反民主主義です。

 

批判的な思考(クリティカル・シンキング)で、情報に接するのがメディアリテラシーですが、政治についても批判的な思考や視点で判断していく政治リテラシーが必要な時代になりました。

 

(冒頭の写真は米共和党全国委員会のHPから)

 


この記事のコメント

  1. 中北 宏八 より:

    米軍が撤退するというなら「どうぞ」と言えばいい。本当の独自外交が求められます。ND猿田佐世さんや柳澤協二さんがどういう意見を出すか注目してます。わが同期の田岡記者はどうしているんだろう?敗戦直後の原点に返って「平和」を考え直さねばなりません。まとまらない感想ですが・・

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