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新刊紹介 山田昌弘著『希望格差社会、それから』 「パラサイトシングル」以来の集大成
2025.03.19 Wed

著名な家族社会学者の山田昌弘さんの名前を知らない人でも、パラサイト・シングルとか婚活、希望格差社会という言葉を聞いたことのある人は多いでしょう。時代を表すキーワードとしてマスメディアでもしばしば使われてきました。
新著『希望格差社会、それから』は、そんなキーワードを生み出してきた著書群のいわば集大成となっています。
山田先生は、格差の観点から戦後の日本を振り返って3つの時期に分けています。
①戦後の昭和期(格差縮小、希望の時期)
②平成期(格差拡大、「希望格差」進行)
③令和以降(格差固定化、バーチャル依存)
です。
③の時期は、希望格差の代償をバーチャル世界に求めています。バーチャル世界に入り込めば、平等で希望のある世界を実感できます。バーチャルな世界には、大きく疑似仕事と疑似家族(恋愛)があると言っています。
前者はリアルの仕事では満たされなくても、努力が報われる世界。たとえばパチンコ。
後者はリアルの家族等では足りない親密性を保証する世界。近年流行語となっている「推し」はその一種。
バーチャルと聞くと、ITがらみのイメージを普通思い浮かべますが、たとえばペットは事実上の家族という意味でバーチャル家族と言えます。
今の時代の日本は、格差の固定化が進むことも含めて、さまざまな庶民文化が花開いた江戸時代後期と似ていると指摘しています。江戸の前期は人口増、経済成長の時代で、典型的には元禄文化が理想を描いていました。それに対して後期は、人口頭打ち、経済停滞という傾向で、文化・文政文化が典型で虚構を描くようになったとのことです。本書の副題<“幸福に衰退する”国の20年>に改めて目が行きました。
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