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米・ウクライナ首脳会談で広がる暗澹たる思い

2025.03.03 Mon

暗澹たる思いで、トランプ大統領とウクライナのゼレンンスキー大統領との「口論」の意味を考えています。ゼレンスキー氏は、専制国家群と自由主義国家群との最前線(フロントライン)で戦っているという自負があるのでしょうが、トランプ大統領はそうした色分けの世界地図は考えず、米国にとって得か損かという世界地図を描いているのでしょう。これでは、双方の意見が噛みあうはずもなく、決裂は必然だったと思います。

 

ウクライナに残された道は、米国の支援を得るために、レアアースの利権を米国に手渡すのか、ロシアのさらなる野望(バルト三国やポーランドへの侵攻)を恐れる欧州諸国に支えられながら、ロシアとの戦いを続けることしかないと思います。前者を選ぶには、トランプ大統領への謝罪という屈辱を求められますし、後者を選べば、国力の差による負け戦のリスクが高まることになります。

 

あの「口論」のなかで、私にとって印象的だったのは、トランプ大統領の次の発言です。

 

「あなたにはカードがない。あなたは簡単に負ける。ウクライナの人たちは死んでいく」(NHKのニュースサイトの翻訳から)

 

米国の支援というカードがなければ、ロシアとゲームはできないのだから、米国の言うことを黙って聞け、そうすれば停戦を得られるだろう、というのでしょう。そして、米国の支援というカードを手に入れたければ、レアアースというカードを米国によこせ、というわけです。

 

これが弱肉強食のレアルポリティークの世界かもしれません。しかし、カードを持たない国は、強力なカードを持つ国に蹂躙されても仕方がないということになります。ロシアと国境を接するバルト三国やフィンランドなどの隣国は、このトランプ発言に震え上がっていることでしょう。台湾はどうでしょうか。中国が台湾に侵攻し、台湾が米国に支援を求めた場合、トランプ大統領が最初に言う言葉は、「あなたの手持ちのカードは何か」でしょう。

 

台湾は、半導体のサプライチェーンを握っていますが、このカードはどれほど有効なのでしょうか。トランプ大統領なら、「TSMCの技術と資本を喜んで迎える、台湾を捨てて米国にいらっしゃい」と、言うだけかもしれません。

 

米国が中国の台湾進攻を許せば、中国の矛先は、尖閣諸島はもちろん、沖縄に向かうかもしれません。あるいは、日本のカードを見るために、尖閣を先に標的にするかもしれません。そのとき、日本の手持ちカードは何でしょうか。

 

日本は、自衛隊というカードとともに、米軍基地や米国の「核の傘」というカードを持っています。米国に対しては、米軍基地を提供することで東太平洋における米国のプレゼンスを高めている、と主張しています。しかし、トランプ大統領にこの論理は通用するのでしょうか。トランプ大統領なら、東アジアにおける米国のプレゼンスとやらは、米国にとっていくらのもうけになっているのか、と問うでしょう。

 

日米安保条約は、ロシアや中国と米国とが対立している、という冷戦構造の上に成り立っています。しかし、トランプ大統領にとって、そんなものは過去の遺物でしょう。米国にとって、日本と組むよりもロシアや中国と組んだほうが得になると考えたら、日米安保は二の次になるかもしれません。

 

暗澹たる思いの連鎖は終わりそうにありません。

 

(冒頭の写真は、米国とウクライナの首脳会談のあとロンドンで開かれた欧州諸国のウクライナの首脳会議=ゼレンスキー大統領のX投稿から)


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