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備忘録(30)立法府の権力見直す機会

2024.10.28 Mon

衆院選は、自民・公明の与党が惨敗という結果になりました。国民の多くが生活苦を味わっているなかで、領収書もないような「裏金」を議員が懐に入れるのを容認してきた自民党に鉄槌が下されるのは当然です。今朝の東京新聞の見出しは、思い知ったか、という庶民の気持ちを代弁しています。

 

とはいえ、有権者の3割前後が望んでいた政権交代は難しい状況のようです。一方、自公政権に加わる可能性も指摘されていた維新や国民民主も、連立政権には否定的なので、このまま進めば、石破首相が少数与党の状態で続投することになるのでしょう。

 

政権交代ではありませんから、表面的には激動ではありませんが、いろいろな法案を決める立法府(議会)の役割は、大きく変化すると思います。これまでは、「政府・与党」が何でも決めていたのが、これからは、少なくとも野党の一部を取り込まなければ、法案が衆院を通らなくなるからです。行政府(政府)がきめたことを立法府が追随するだけだったのが、これからは、野党が連携して提出、成立させた法案を行政府が執行するという場面も出てくる可能性があるからです。

 

もちろん、参議院は与党が多数党なので、衆議院が法案を通しても参院で否決されることもあるでしょうから、衆院で可決された野党法案がすんなりと成立するとは限りません。とはいえ、来年夏には参院選挙が控えていますから、国民の多数の支持を得るような法案を参院が否決するようなことを繰り返せば、参院選でも与野党逆転になる可能性がさらに高まります。

 

たとえば、選択的夫婦別姓の制度化について、明確に賛成を表明している立憲(148)、公明(24)、国民(28)、共産(8)、れいわ(9)の合計は217議席で、入籍後も旧姓に法的拘束力を持たせるという折衷案で夫婦別姓を推進するという維新(38)も加えれば、255議席となり、過半数の233議席を超えることになります。夫婦別姓に前向きだった石破首相が自民党の自主投票を認めれば、参院の動向次第で、夫婦別姓が実現する可能性が出てきます。

 

政治資金規正法についても、より厳しい内容の法案を野党がまとめれば、与党も従うか、従わなくても衆院を可決することになるでしょう。予算案は衆院の議決が優先されますから、政府・与党案に野党が組み換えを求めれば、与党は従わざるを得ないことになるでしょう。

 

今後の国会運営の基調は、政府案に野党の一部または全部の同意を取り付けるような修正が加わるような形で法案が成立し、執行されることになると思います。そのうえで、ひとつでもふたつでも野党主導の法案が衆院で可決され、参院でも承認され成立するようなことになれば、立法府の役割も見直されることになるでしょう。小学校の教科書に出てくる「三権分立」とは、こういうことだったのか、という実感も国民に定着することになると思います。

 

立憲の野田代表は「政権交代前夜」という言葉を使っていましたが、政権交代を実現するには、今後の国会運営で、「野党の反対で国会紛糾」という場面ばかりでなく、「野党主導法案に与党も同調」という場面がつくることが近道ではないかと思います。

 


この記事のコメント

  1. 徳光清子 より:

    「野党主導案に与党も賛成」と言う場面を想像し、望みたいです。

  2. 匿名 より:

    個別の議題で恐縮ですが、夫婦別性の議論が進んでいますが、夫婦創姓という意見は皆無なのでしょうか。創姓のほうが結婚した実感があるのではと思うのですが、メディアで聞いたことが無いです。

  3. 高成田 享 より:

    姓の変更は、やむをえない事情を家裁で認めてもらう、というのが現在のルールのようです。人生の新たなスタートに改名というのも、承認保護プログラムみたいで、面白いですね。

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