デジタル時代のメディア、特に新聞社に期待すること(下)<論座から再録>
インターフェース革新の発想 ニュースアース(NewsEarth)
もう5年くらい前になりますが、国立情報学研究所の高野明彦教授の話を聞いてたいへん興味をひかれたことがあります。高野さんは、球の表面に新書の背表紙(タイトルが書いてある部分)をずらりと貼り付けるという実験をやっていると話しました。球を好きなように回して、気になるタイトルが目に入ったら、そこをクリックします。すると、本の表紙や目次、本の紹介文、場合によっては第3者が書いた書評などを表示することができるのです。
これをヒントに私が考えたのは、VR技術を使ってニュース記事を球面に貼り付けるという方法です。その日その日のニュースが、大小おりまぜて紙面ならぬ球面に表示されて、そこからニュース本文や動画、さらに過去の関連記事、あるいは参考図書情報、執筆記者のプロフィールやこれまでの執筆記事などを、構造化してリンク表示できるというものです。地表に近い層とか、マントル層などと層区分をしてもいいかもしれません。日頃よく見ている目当てのテーマにさっと直接行くこともできるし、また、任意の方向に球を回してどこかで止めると、出会ったことのないテーマの記事と新鮮な出会いが生まれるでしょう(上図)。
AIを活用した学びの支援を
冒頭で紹介した谷川嘉浩さんは、つながること自体を目的化せず、ひとりになって集中する時間を確保することの大切さを語っています。そのためのひとつの方法として、私は、インプット(読む、見る、聞く)で頭を全面的に埋めるのでなく、アウトプット(書く、作る、話す)のウェイトを大きくすることが大事だと考えています。これはインプットしたものから取捨選択、再編して、自分なりのアウトプットを構成(編集)することを意味します。
そこで私が欲しいと思っているのは、アウトプット支援サービスです。日頃、これはと思ったニュース記事やローカルの資料を適宜記録ソフトで保存(インプット)しているのですが、それをもとに自分のノート(マイノート)をつくりたいという欲求があります。
さまざまなところから文章や図表などを部分的にコピーできて、それをKJ法のように面的に並べたり、水準を分けて並べたりすることがスムーズにできるような機能がほしいです。しかも、そのユニットを配置する場所や順序の組み替え・編集も容易にでき、自分で書き込むオリジナルの文と合わせた文脈、ストーリーを形成していけるという「超スクラップブック」です。その際、元の記事の一部分だけを引っ張ってきても、出所がわからなくならないよう、自動的に出所が付記されるというのも必須です。AIの出番かもしれません。
新聞は、ぜひ自由なジャーナリズムを追求しつつ、人々にとっての落ち着いたメディア環境、ひいては学びの環境を切り開いていってほしいものです。
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新聞は、その日、伝えるべきニュースを大きさや掲載する場所によって価値判断をつけて、読者に提供しています。料理人がその日手に入れたいろいろな素材からつくった幕の内弁当のようなものです。しかし、これからの新聞は、この記事についてもっと詳しく知りたいという人には、さらに深堀りした情報を提供し、その素材についても知りたいという人には、その入手先などのデータを出していくものに変化していくと思います。まさに立体的な地球儀のような情報球に、それぞれの書き込みが加わるというのが新聞の未来だと思います。校條さんの描く新聞像に実際の新聞社がどれだけ近づけるのか、新しい”新聞社”が登場するのか、見ものですね。