備忘録(6)ウクライナの戦場にヒョウは走るか
ドイツ製戦車レオパルト2のウクライナへの供与をめぐって欧州諸国が揺れています。ポーランドは、膠着状態にあるウクライナ戦争を打開するために、この戦車をウクライナに供与すると表明しています。しかし、そのためにはドイツ政府の許可が必要なのですが、ドイツは結論を先延ばししています。戦争の行方を左右する兵器としてこの戦車が脚光を浴びているのです。
レオパルト2は、西独時代のドイツが1970年代に開発、現在はNATO諸国を中心に世界の12か国が保有しています。攻撃力、防御力、機動力にすぐれ「世界最強」などといわれています。レオパルト(ヒョウ)の名前の通り、速度は時速70キロで、まさに世界のトップクラスだそうです。平地での陣取り合戦になっているウクライナの戦場では、ロシア勢を押し戻すのに有効な武器と見られています。
戦況を大きく変えるゲームチェンジャーになりそうなこの戦車がウクライナに渡るのをドイツが躊躇しているのは、高性能の武器の登場によってウクライナの戦争が欧州全体に広がるのをおそれているからです。武器の供与は、相手からみれば参戦しているのと同じですから、ロシアがポーランドなどに報復攻撃をする可能性が高まります。そうなれば、NATO対ロシアの軍事衝突に発展しますから、ドイツも戦わざるを得ません。第二次大戦を引き起こした敗戦国のドイツは戦後、日本と同じように平和国家の道を歩んできましたから、戦争の危険が高まる供与に国民の過半が反対なのです。
とはいえ、ロシアは春から夏にかけて大攻勢をかける準備をしていると米国の戦争研究所は分析しています。ウクライナとしては、それまでに、ロシアに占領された地域を奪い返しておく必要があります。ウクライナのゼレンスキー大統領は、1月20日にドイツで開かれたウクライナ支援の関係国会合で、各国の国防相に「この戦争に遅延は許されない。スピードアップし、時間を我々の武器にしなければならない」と、戦車の供与に猶予の時間はないとテレビ画面を通じて呼びかけました。
ドイツも「ポーランドがウクライナに戦車供与するのを止めるつもりはない」としていますから、あいまいなままにポーランドが戦車を供与することになるかもしれません。しかし、大量の戦車を持つロシアと対抗するには、ポーランドの協力だけでは十分ではありませんから、ウクライナはドイツの許可を得て、他の国からもレオパルトの供与を受けようというのでしょう。
昨年2月24日のロシアの軍事侵攻から間もなく1年になります。和平が成立するためには、ウクライナ軍が2月24日以前の状態までロシアを後退させる必要があると思います。そのためには、ドイツの決意が求められると思います。
(冒頭の写真はレオパルト2A5 ©Bundeswehr/Modes)
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ドイツはウクライナにレオパルト2を提供すると発表しました。ドイツが提供するのは14台と報じられていますが、NTAO諸国を中心に2000台((うちドイツは300台)といわれますから、ポーランドを含め、ウクライナに提供されるレオパルトはかなりのかずになるかもしれません。米国も最新鋭のエイブラムスを提供する穂プシンだと報じられましたが、これを使いこなすには2年かかるそうで、いまの戦場には間に合いそうもありません。