「解散」ではなく「退陣」でしょう
安倍首相が来年4月に予定されている消費税の引き上げを延期したいと麻生財務相らに伝えたそうです。これに対して麻生財務相は、再延期に反対し、仮に延期するなら「衆院を解散すべきだ」と応じたと、新聞は伝えています。
消費税の引き上げを延期しなければならないのは、大胆な金融緩和などによりデフレから脱却するというアベノミクスが行き詰まったからです。政策の失敗をごまかすために、「解散」という脅しで国会議員をおとなしくさせるのも、あるいは本当に解散するのも、政治の大義にもとる行為です。麻生さんも直言するのなら「退陣」と言うべきでした。
安倍首相は、今回の伊勢志摩サミットをふたつの政策転換に利用するつもりだったようです。ふたつというのは、金融政策から財政政策重視の政策と、消費税引き上げの再延期という政策です。首相がサミットで展開した論理は、現在の経済状況はリーマンショック前後と似ているから、先進国は財政出動でこの危機を回避しよう、というものです。サミットでの同意を受けて、リーマンショックのような事態という増税延期の条件をクリアしたうえ、各国が財政出動で政策協調をするのだから、増税延期は必要という筋書きを考えたのでしょう。
しかし、サミットでの各首脳の反応は冷淡で、リーマンショックという認識も財政出動という政策も、同意や合意を得ることはできませんでした。サミットのホストだった首相の完敗です。
オバマ米大統領の広島訪問は、たしかに安倍首相の評価につながったかもしれませんが、オバマ大統領が広島の平和公園で、核のない世界に向けての決意を語ったのに対して、安倍首相は日米安保の堅持を語り、政治家としての次元の違いを見せてしまいました。
核爆弾を使用した米国の大統領が日米の次元で広島を語れば、謝罪と責任の問題につながってしまう。だから、核戦争と人類という次元で語るしかなかった。オバマ大統領には、そういう事情もあったと思います。政治的思惑は、だれにでもあると思いますが、被爆国である日本の首相には、核戦争の悲惨さを世界に向けて語り、日米安保など軍事同盟の枠組みを超えた世界的な平和への取り組みの必要性を強調してほしかったですね。
サミットが終わり、次の政治日程は7月の参院選挙と、安倍長期政権をかけての衆院解散です。景気の悪化が懸念されるなかでの参院選で、消費税の引き上げに反対する野党に対抗するには、政府が消費増税の延期を打ち出したほうがよい、というのが与党の考えでしょう。安倍首相の狙いもそこにあるのでしょうが、公約を安易にくつがえす首相を国民は信頼するでしょうか。国民は、衆院選も含めて賞味期限の過ぎた首相の退陣を求めるのではないか、と思えてなりません。
前の記事へ | 次の記事へ |
コメントする