大手メディアが伝えない情報の意味を読み解く
情報屋台
文化
国際

北朝鮮でのロックの演奏会

2018.07.25 Wed
文化

北朝鮮でのロックの演奏会
平成30年7月
仲津真治

1)  東京渋谷の「シアター・イメージ フォーラム」と言う映画館で、北朝鮮を
舞台とした映画が上映されていると言うので、暑い中ですが、興味があり、行っ
てきました。 たまたま隣り合わせとなった鑑賞者に聞いたところ、同館のほか、
大阪、仙台など何カ所かで上映されているとのこと、客の入りは、程々でした。

2)   さて、この映画のポイントは、北朝鮮の「日本からの独立記念日」、つまり、
韓国式に言えば、光復節である「8月15日」を祝う日の記念行事に、
海外からのミュージシャンが招かれ、自らライブの演奏会を行うとともに、彼ら
も北朝鮮側の美少女合唱団等の演奏を聴き、合わせてある種の交流演奏会を行う
というところに在ります。 大きなホールは、約千五百席ほど入り、本番では所
定の鑑賞者で満員でした。 因みに、映画の制作は、2016年とのこと、即ち、二
年前の事です。 制作国はノルウェーやラトビアでした。

映画は、本演奏に至るまでの、このミュージシャン達と、北朝鮮側当局者などと
の間の折衝、諸調整、妥協、リハーサル、本番など各場面の映像やセリフの録画
からなっていました。

3)  招かれたミュージシャン達とは、何と、1980年頃結成のスロベニア出身(旧ユー
ゴスラビアの一部)の「ライバッハ」というロックバンドでした。 かの北朝鮮が
欧米のロックバンドを自国の記念行事に招くというのです。  しかも、ライバ
ッハと言えば、個性的で過激なパーフォーマンスで「ネオナチ」との批判を浴び
ており、また、ロシアから出入禁止措置を受けるなど物議を醸してきたロックバ
ンドです。 こんなことまでやってのけるとは、北朝鮮の現体制の下で、何か方
針に変化が起きていることを示唆していました。此の映画でも、その変化が
臭っていました。

4)  さて、使われる言語は、ほとんど英語でした。ロック音楽の世界は英語なの
です。それに、両者間の遣り取りで使われるのも英語でした。国際語も矢張り
英語ですね。 ライバッハを代表する監督は、ノルウェー人でしたが、彼も当然
英語を使用、北朝鮮側も英語でした。

映画のオリジナル版サブタイトルは、英語とハングル表記の朝鮮語でした。

ただ、これに、日本向けとされた版には、日本語の綺麗な版が打ち込まれていま
した。

4)  英語での折衝は厳しいものがありました。

北朝鮮は労働党一党支配の金首領統治下の国ですから、それで
貫こうとします。 これに対し、ノルウェー人監督は、「彼らはその世界しか知
らない。彼らは、それで全てが廻っているのだ」と理解を示しつつ、国際的「礼
儀」を主張、また、音楽や舞台のルールを述べ、納得できない妥協をしませんで
した。

斯く、厳しい折衝が行われて、行事内容、選曲やパーフォマンスなどについて妥
協が成立しました。

ライバッハ側では、ドレミの歌やエーデルワイスが代表的でしょう。 北朝鮮で
は、アリランや白頭山が選ばれました。 これでは演奏時間は短くなるだろうと
いうライバッハ側では予想が出ていました。 その通りで、そこは現実的な妥協
でになったのでしょう。

5) 歌唱と演奏  ライバッハ側に、ミーナという美人のボーカリストが居ました。
若干歌った中,ロック風の「ドレミの歌」が印象的でした。

もう一人の「真ん中に立ち、迫力或る低音が凄く響く、ミランというバスの歌い
手」が居ました。 いつも独特の頭巾を被っていました。 北朝鮮側から取れと
謂われても取らずに居ましたね。独特の歌唱でした。

このミランが歌った曲で圧倒的であったのは、ある種の自由の歌でした。
歌詞を良く聴いていると、「日本から独立した。これからは、自由のため、進め」
と歌っていました。」 聴きようによっては凄い内容です。

この「ライバッハの映画の意義」は実は此処に在ると思いましたね。


コメントする

内容をご確認の上、送信してください。

日本語が含まれない投稿は無視されますのでご注意ください。(スパム対策)

文化 | 国際の関連記事

Top