備忘録(11)プーチン氏への逮捕状
国際刑事裁判所(ICC)がロシアのプーチン大統領に逮捕状を出したことを明らかにしました。ロシアがウクライナ侵攻後に一方的にロシアに併合した地域から子どもたちを移送したことがICCの定める「戦争犯罪」の規定(不法な追放・移送または拘禁、及び、占領国による占領地域住民の移送もしくは追放)にあたるという理由です。
外務省によると、ICC規定(ローマ規程)の締結国は104か国で、日、仏、独、英などは締結していますが、米国やロシア、中国などは自国の兵士が国際法廷で裁かれることを恐れて締結していません。裁判は被告が出廷しない欠席裁判を認めていないので、プーチン氏が直ちに逮捕されたり、裁判にかけられたりする可能性はほぼありません。
それでも、この逮捕状に大きな意味があるのは、プーチン氏のウクライナ侵攻をめぐる行動に戦争犯罪という不名誉な烙印が押されるということだけでなく、プーチン氏がローマ規程の締結国に入った場合、逮捕されるおそれがあるため、国際的な行動を制限されるということです。また、今後、プーチン氏が停戦を決めたり、権力を失ったりした場合でも、逮捕状がある限り、出廷拒否を理由にして、国際的なロシア制裁が解除されるのは難しくなると思います。ロシアが制裁を逃れるためには、プーチン氏をICCに差し出さなければならなくなるということです。
歴史が長い国際司法裁判所(ICJ)と違って、個人を裁くICCは2003年に発足した国際組織で、戦争犯罪の防止という意味では発展途上にあります。ロシアのウクライナ侵攻に対して、ICCやICJが対応できるかは、これからの世界の平和にも大きくかかわっています。プーチン氏への逮捕状は、平和に向けての人類の叡智の序幕として歴史的に意味のある出来事になると思います。SNS上には、早くもプーチン氏が国際法廷で裁かれるアート(下の写真)が流れています。そう願いたいものです。
(冒頭の写真はプーチン氏への逮捕状を報じるニューヨークタイムズ紙のネット版。朝日新聞は1面3段の地味な扱いでした)
以前に筆者がウクライナ戦争と国際法について書いた記事は次の通りです。
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