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「在宅避難」の難しさ

2016.04.15 Fri
社会

熊本地方を襲った地震は、日本中、いつ、どこでも大きな地震が起きても不思議ではない、ということをあらため認識させました。マグニチュード6.5で、それほどの巨大地震ではなくても、震度7という強い地震が起きるということも驚きでした。「これほどの強い地震が起きることは想定外だった」といった言い訳は、通用しないということです。

被災地のニュース映像をみると、家のなかにはいられないので、公共施設の中や駐車場などの広場で夜を過ごす人たちがたくさんいました。東日本大震災では、津波で家を流された人々が多く、高台の学校などが避難場所になりましたが、大きな地震が起きた場合、津波がなくても、安全を確保する場所として避難場所が必要だということがわかります。

しかし、首都圏などの大都市圏で、多くの人々が安全に避難できる場所はどれだけあるのでしょうか。耐震構造になっていたり、耐震補強をしたりしている施設がほとんどだと思いますが、住民が寝るために横になるスペースとか、食料や飲料水とか、下水道の設備とかになると、十分とはいえないところが多いのではないでしょうか。一晩は過ごせても、次の日から生活できるという意味での避難所の整備は、心もとない気がします。

先日、私の実家がある東京都世田谷区内のコミュニティーセンターで防災イベントがあり、私も参加しましたが、そこは避難所に指定されていないこともあり、食料や飲料水の備蓄はないとのことでした。それなら避難所に指定されている場所に、食料などの備蓄があるのかというと、これも十分とはいえないとのことでした。実際に大きな災害が起きた場合には、地方自治体から各避難所に食料などが配給される仕組みになっているのですが、大震災などで交通網が寸断されれば、配給ばかりに頼ることはできないでしょう。

都内の各家庭に配布されている「東京防災」というハンドブックを読むと、大地震などが起きたときは、大きな公園や広場などに逃げて、火災の危険を避けたうえで、家に被害があるかどうかを確認して、生活ができないような被害があった場合には小中学校などの避難場所に、そうでない場合は家に戻る「在宅避難」という手順になっています。

ある防災担当者は「在宅避難が基本」と言っていました。避難所にある、あるいは配給されるであろう食料や飲料水の量を考えれば、できるだけ自宅の食料や飲料水を利用してほしい、ということでしょう。しかし、今回のニュース映像を見ると、家屋が倒壊する心配がなくても、家具や食器などが散乱している屋内を片付けるには、時間と人手がいるようで、「在宅避難」はそう簡単ではないと思いました。

そういう観点から、公共の避難施設をさらに整備する必要があるということですが、それと同時に、家族の生活は自分たちで守る、という意識であらためて防災を考えることが大事だと思います。家具などが倒れたり、落ちてこないようにする補強、ガラスの飛散防止フィルムなどで住環境を整えたところで、食料や飲料水の確保、断水時のトイレなどの排水用の風呂水の貯水などが考えることが必要です。トイレも、断水だけなら風呂水で流せますが、下水道が壊れた場合には、それもできなくなります。簡易トイレの道具などを用意しておくことも大事でしょう。

東北地方に住んでいて、上京したおりなどに、「震災の風化で、あまり支援もできなくて、申し訳ない」といったことを言われることがあります。そんなときに私は「風化して困るのは被災地ばかりでなく、たとえば首都圏に住んでいるみなさんです」と答えます。震災に対する準備を忘れて困るのは、これから大地震が起きる地域の人々だと思うからです。

今回の熊本地震は局地的なものかもしれませんが、いま熊本で起きていることは、「明日は我が身」に起こることなのだと思います。まずは、被災地の救援・支援が第一ですが、明日を考えて我が身を守ることも考えて、実際に行動することが大事だと思います。

 


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