日本の新聞はニューヨークタイムズになれるか(上)
標題の問いは、日本の新聞がデジタルで食えるようになるかという意味です。
ニューヨークタイムズ(以下NYT)は2019年4-6月期に、合計480万部、うちデジタル380万、アナログの紙100万と、全米で地方紙がたくさんつぶれているのを横目に見ながら、有料デジタル路線で気を吐いています。ただし、購読数ではデジタルが全体の8割を占めますが、購読料収入で見るとデジタル売上は約4割にとどまっています。実際、週1ドル!という驚きのキャンペーンからもわかるように、高級紙のプライドも捨てたかのような低料金で読者を集めてきたので、当然そのような数字になります。それでも、デジタル収入比率は年々上がってきています。
一方、日本の新聞は坂を転げ落ちるように年々部数を減らしています。スポーツ紙を除いた総発行部数が2006年頃の4700万部から落ち始め、2018年末には3700万部と、12年ほどで1000万部減少したことになります。いわばひと頃の読売新聞がまるまる消えてしまったようなものです。その読売自体は最高部数のときから200万部以上も減らしています。(冒頭グラフは2017年まで)
果たして日本の新聞は生き残れるのか。実は、その前に立ちはだかる大きな壁は「成功体験」です。日本の新聞は、欧米と異なり、高級紙とも大衆紙とも言えない折衷スタイルで、強力な販売店網にも支えられて、世界に冠たる大部数の新聞に成長しました。減ったとは言え、いまでも読売新聞は部数断トツ世界一の新聞ですし、上位に日本の新聞が並びます。
成功体験が大きいということは失うものが大きいということで、NYTのような思いきったデジタル転換ができません。一方、日経を除く多くの新聞社はヤフーニュースやスマートニュースなどのキュレーションメディアに、非常に安い値段で記事をバラ売りして、それら新興ネットメディアの「下請け記事製造業」になっています。
それでも、スマホ読者の多くは、無料で記事が読めるからかまわない、と思っているかもしれませんが、万一新聞社がつぶれたら、「取材力」という社会の財産が大きく失われ、キュレーションメディアへの記事配信も滞る可能性があります。
では、いったいどれだけの人がNYTのような有料電子版・デジタル版を購読して、新聞社の生き残りに貢献するでしょうか? (つづく)
この記事のコメント
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我々庶民は世間に起きてることの事実は、身の回りのことしか分かりません。
日本政治や世界の出来事は、その殆どを新聞やテレビ、雑誌で知るしかないのです。
従って、その記事、報道が真実を捻じ曲げウソを伝えたら庶民の殆どは、評価判断が狂った状態で対応してゆくことになります。
つまり、社会の安全と繁栄を築くことは不可能になり、不幸な生涯をおくることになります。アメリカの新聞はそのことをよく理解されてると思います。
だからニューヨークタイムズは人気があるのでは。 -
官僚とマージャンやってるもん
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ニューヨークタイムズの潜在読者は世界中にいます。週1ドルで読めるなら試してみるか、という人はかなりの数になるでしょう。これに対して、日本の新聞の読者は日本語話者のみ。この差は決定的です。コラムのタイトルへの答えは「Never」と言うしかありません。悲しいことですが。