熱中小学校の勢いがとまらない
先日、赤坂のオフィスコロボックルという交流スペースで「グッドデザイン賞受賞記念の集い」というパーティが開かれました。「熱中小学校」という山形県高畠町で始まった活動が、モノではなく無形の活動としてグッドデザイン賞をもらったのです。
熱中小学校は、「もういちど7歳の目で世界を・・・」をキャッチフレーズに、社会人が学ぶ場を設けようというものです。先生は小学校のように教諭と呼ばれ、オフィスコロボックル代表の堀田一芙さんらの呼びかけで各界の実績ある人々がはせ参じています。教諭に対しては交通費が渡されるだけですが、ギャラよりも教えることを喜びとする人たちが集まっています。校長は堀田さんが白羽の矢を立てた重松大輔さんというベンチャー「スペースマーケット」の社長が就きました。堀田さん自身は用務員という肩書きで、全体の仕掛け人の役割を果たしています。プロデューサーと言ってもいいでしょう。
熱中小学校の構想は2014年の暮れに浮かび上がりました。オフィスコロボックル代表でサテライトオフィスの動向に造詣が深い堀田一芙さんは、ソフト開発会社社長の佐藤廣志さんから廃校の用途のことで相談を受けました。そこで山形県高畠町の現地に赴き、地元役場の人の案内で現場を視察したのですが、サテライトオフィスの案にもうひとつストンとこない点を感じていました。視察後、町内の赤提灯で懇親会になり、そこで堀田さんが放った言葉は「そうだ、学校にするか!」でした。
それから話はトントンと進み、翌年5月には第1回のオープンスクールが開催され、10月には開校式を迎えて84人もの人が1万円ないし2万円の受講料を払って入学したのです。役所といっしょに進める案件が、こんなにも早く進んだのはなぜかとの問いに堀田さんは、役所の中に軸になる人材がいることと、行政の体質がフレキシブルなことが条件だと答えました。
2015年10月に開校した熱中小学校は、その後本年(2016年)9月には第3期の生徒たちを迎えました。入学者数は113名で、そのうち70名は2期からの継続、43名が新規入学です。山形県内が81名、県外が33名。県外のうち県別の筆頭は宮城県で12名ですが、首都圏の一都三県を合わせると15名を占めています。
こうして高畠町で実績を示した熱中小学校は、全国さまざまな地域で、第2第3の熱中小学校の発足を誘発し、会津若松市、富山県高岡市、八丈島(東京都八丈町)ですでに開校しています。会津若松市の場合は廃校ではなく酒蔵、また高岡市は寺を使って運営されています。そのため、呼び名も熱中塾など若干の違いがあります。さらに、徳島県上板町、宮崎県小林市、北海道更別村で開校準備が進んでいます。
また、東京分校というのが計画されていて、11月オープンのすみだ北斎美術館を拠点に来年の春の開校を目標としています。東京校はあくまでも分校として、全国の熱中小学校の交流拠点として位置づけようとしています。首都圏に移り住んでいる地方出身者と現地の人とのコミュニケーションをつなぎたいというのが堀田さんの願いです。
堀田さんも当初見通してなかった熱中小学校の思わぬ展開。冒頭のパーティに参加していた重松校長も「こんなにも広がるとは思っていませんでした」と率直に語っていました。
用務員という名のプロデューサー堀田一芙さんは日本IBMの出身です。その経歴が熱中小学校の取り組みに役立っているのかどうかを尋ねると、おおいに役立っているとのことでした。IBMにおいて大型コンピュータでなく、パソコン部隊を率いていたことから、さまざまな外部の人とつきあって、その力を活用する経験が生きているというのです。人を活用する、人を生かす経験が、熱中小学校の立ち上げや運営につながっていると堀田さんは感じています。
[参考]
熱中小学校 http://www.necchu-shogakkou.com/
同 Facebookページ https://www.facebook.com/NecchuShogakkou/
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有機農業の里として知られる高畠町は、ある意味で「日本の農村のトップランナー」のような気がします。大切なこと、面白いことを次々に実践している町です。この熱中小学校の試みもスゴイ!