みずほ銀行の貸金庫事件と金融庁の責任

貸金庫から顧客の金品が盗まれる事犯がみずほ銀行でも起きていました。銀行が明らかにしたものですが、実際に事件が発覚したのは2019年のことで、いままで公表しなかったみずほ銀行が批判されています。
金融機関の業務に関わる犯罪事件ですから、公表するのは当然ですし、昨年10月に、三菱UFJ銀行での事件が発覚したときに公表する機会もあったはずです。なぜ、今になってという疑問も残りますが、私が指摘したいのは金融庁の責任です。みずほ銀行は、事件が発覚後、金融庁には届け出たとしているからです。
みずほ銀行の事件で、貸金庫から行員が盗んだ手口は明らかになっていませんが、三菱の例を見ても、銀行側が保管している顧客用の鍵の予備キーを利用したのかと思われます。貸金庫の運用方法に問題があったのは明らかで、もし金融庁がみずほ銀行からの報告を受けて、全国の金融機関に現状の運用方法を報告させるとともに、適切な運用マニュアルを示して改善を指示していれば、少なくとも三菱の事件は防げたはずです。
金融庁がなすべきだったのは、みずほ銀行に再発防止策を取らせるだけでなく、すべての金融機関に再発防止策を取らせることだったと思います。なぜ、それをしなかったのか。みずほ銀行が内密に事件を処理したのにあわせて、全金融機関への再発防止策の指導や通達を避けたのでしょうか。もし、そうだとすれば、これは金融機関を監督する行政機関としてのさぼり行為ですし、あってはならない行政の不作為です。
1990年代に銀行の不良債権問題が金融危機を引き起こしたときに、当時の大蔵省の金融界との癒着が大きな社会問題となりました。その結果、大蔵省から金融行政を切り離す形でできたのが現在の金融庁で、財務省ではなく内閣府の外局です。(発足時は総理府の外局で金融監督庁という名前でした)。大蔵省と金融界との関係は、全国の金融機関が大蔵省の天下りの受け皿になっているなど、監督どころか癒着になっていたことが明らかになりました。その反省に立って、金融庁と金融界とは持ちつ持たれつではない緊張関係があるはずなのですが、今回の事例で、癒着はないとは思いますが、緊張関係が薄れてきたのかと思いました。
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