テクノロジー2018「世界を動かす百の技術」
日経テクノロジー展望2018「世界を動かす100の技術」(343頁)を通読して
平成29年 2017 11月
仲津 真治
1) 一見易しく、中身難解
最新の科学技術の動向を少しでも掴めればと、一見易しそうに見えたこの本を購入し、読解に懸かりましたが、中身は余りにも専門用語が多く、難渋を極めました。 各項目は例えば、「止まらない心臓」とか、「一人ひとりに合わせたプライシングが可能に」などと、興味を持たせ、知的関心を惹き付けるものなのですが、読み出すと、カタカナ語の羅列が多く、まるで砂を噛むような感じになりました。
因みに、本書の別の箇所ですが、次のような文章は、どうしても読みが下りませんでした。曰く、
「各マイクロサービスは、「サーバー」と呼ぶコンピュータを意識せずに利用できるクラウドのコンピューティンク゛リソースによって実行する。これをサーバーレスアーキテクチャーと呼ぶ。 」
2) 何故、そうか。 そして、為すべき努力には何か。
この一文の分かりにくさをもたらしている大きな理由は、「英語の用語をそのままカタカナ語に変えていることと、それを分かり易く、こなれた日本語にしていない」事に在ると思います。
こうしたことは、主に明治期に、多くの欧米語を翻訳し、表意文字である漢字の熟語にして言葉を創造し、実質文章を起こすような工夫をして、欧米の文化・文明を吸収消化した「和製漢語創成」の努力をしたようなことを、ほとんど行わなくなった現代日本の文化特性や時代趨勢を反映しているものと見られます。
かような和製漢語は、例示すれば、科学・技術、政治・経済・文化・文明、社会など多岐多様に亘り、語彙約一千に及び、現代日本語を豊穣なものとし、現代の中国語にも多大の影響を与えていると聞きます。聞けば、「中華人民共和国」と言う漢語国名の中で、「人民」と「共和国」は明治期に日本で作られた和製漢語であると承知しています。
かくて、現代でも、和製漢語の創意・工夫やこなれた日本語作りの努力があって良いように思います。 カタカナ語の氾濫は、そうした努力・工夫がほとんど無い事を物語っています。 現代はそういう時代と言ってしまえば、そうなのでしょう。
3) それでも、本書の努力を讃えて、科学技術の大項目を掲げておきましょう。
AI、自動運転、IoT、インフラ更新、バイオ、素材、ビッグデータ、保険、合金、心臓再生、新エネルギー、エコロジー、3Dプリンター、建築など
4) そして解読出来た中から二点紹介します。
4-1) レーザードローン
地形や構造物の情報を素早く取得するのに、三次元測量が重要と申します。そして、この分野でもドローンつまり小型無人機の活用が注目されているようです。現に空撮や写真測量でドローンが活躍つつあるようです。
中でも、感心するのは、地形などをもろに把握できることが可能となることで、 そのために、レーザーが使われる由です。 地面にレーザーを照射し、その反射波の時間差を利用して計測すれば、従来取れなかった、樹木の生い茂る地帯等の表面地形を直に把握できる由です。これは大いに偉力を発揮することでしょう。
4-2) VRショッピング
此処にVRとは仮想現実と訳されている手法です。
そしてVRショッピングとは、仮想空間に店舗を設け、実店舗で買い物をしているような投入感を与え、買い物の楽しみも提供出来ると申します。
例えば、仮に東京のさる店で、ヘッドマウントディスプレイを取り付けると、アメリカ・ニューヨークのタイムズスクェアにある有名百貨店の仮想空間に移動し、その買い物客は、店内を歩き回って品選びをして、うなずくと、それで買い物が成立するという段取りになると見られています。
こう言う話を聞かされると、かつて漫画で「或る人物が特殊なエネルギーと装置を使って、瞬時に移動する場面が描かれていた」のを思い出しましたが、似ていますね。ただ、VRのケースでは現実の移動はなく、背景空間が仮想のものに変わった様に見える事が、決定的に違います。
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和製漢語を創出する努力が必要だ、とのご意見に全面的に賛成です。中国語ではコンピューターを「電脳」と表現しているとか。実に優れた、かつよく分かる漢語です。わずか2文字でコンピューターという7文字のカタカナと同じものを表現しています。漢語の創出という点では、日本は中国の後塵を拝している、と感じます。