科学博物館の最深研究「深海 2017」
上野の科学博物館で、新しい特別展が始まりました。 「深海 2017」と言い、平日というのに、結構な混みようでした。 夏休み前ゆえか、子供が少ない一方、女性の連れが多く、また、解説のレシーバーを耳にした一人行の年配の御婦人を何人か見かけました。
これも時代の変化でしょうか。
それにいつものように、外国人がちらほら。 説明書きは、日本語が主、あと、英中韓の三カ国語でした。
1 深海とは?
大航海時代の到来以降、人類のフロンティアは、新大陸から宇宙や海へと発展して来ました。
この中で、海の世界は、表面の大海原(英語で the main と言う。)を除いて、知られる所の少ない領域でした。特に、深海はそうです。それは、宇宙と同様です。
ここに、深海とは、海洋生物学の観点では、太陽光がほとんど届かなくなる、水深二百メートル以深の深いところを指す由です。
ただ、この数値は凡その目安で、深海の諸条件は様々に変化します。
光が届けば、光合成が起きますから、通常其処は植物の世界の嚆矢で、それを始原とする生物界が始まります。
ここに、対比型で語れば、百メートルも潜ると、光量は1%に減じ、実質暗闇の世界になってしまうと言い、一方自然光の中でも、青色は良く通って、深さ一千メートルも微かながら達していると申します。
このため、赤や橙色などの長目の波長の光はその前に吸収されてしまうので、海は青く見えると聞きます。
大海は巨大で、地球表面積の約七割を占め、その平均水深は約三千八百メートルもあり、海の容積の約九十三%が、深海と言います。
また、深海は高圧です。水深が一メートル深くなるごとに一気圧(1cm平方メートルに約1kg)づつ、水圧が増します。
例示として、深海に沈めた金属バット等が展示されていましたが、短くなっており、且つ見事にひしゃがって居ました。
恐ろしい水圧ですね。
海水温度に付いてみると、季節や海域によりますが、概ね外洋に行くに従い下がり、表面から深海に向かうと低下します。 ほとんどの外洋域の海底は、海水温約二度と非常に冷たい由です。
真夏でも真水の氷点に近いのです。
端的に言えば、深海は暗く、高圧で、寒冷な世界です。
2 生命の発祥と発展
従来の通説では、地球という惑星では、約四十億年ほど前に生命体が生じたとされ、所は海であったと習ってきました。この生命体は微少ながら、やがて進化し、所謂光合成で、二酸化炭素を取り込み、光のエネルギーから栄養物を得る一方、大気中に酸素を放出するようになりました。
植物の登場です。
そして、更に気の遠くなるほどの年月が経過して、この酸素が大気中に充分たまると、今度は、この酸素をエネルギー源として生きる物が現れてきました。
動物の出現です。
植物次いで動物の登場は、生物相を極めて多様なものとし、世界を複雑で変化に富んだものにしました。
この光合成と植物の形成、その動物による捕食、消化の世界には、今日の生物学の観点や捉え方が随分入ってきていて、様相は複雑を極めるようです。
実際、今回の科学博の展示は、その後の理論や学説の発展や研究の進展を反映したのか、様子がかなり違っていました。
まず、今回の展示では、生命体発祥の始原として、深海熱水起源説が上げられていました。
出来上がって何億年か経った、惑星地球に大量の雨が長く降り続き、やがて海が出現、その深海底に火山性の熱水孔があちこちに現れて、遂に其処で原始的な生命体が誕生したというのです。
この熱水の噴出孔は、地質の記録から、約三十八億年も昔から在ったことが知られており、現代に至るも在ると申します。
有力な生命発生源を裏付けるものと云えるようです。
何せ、今でも生命体や、その持続性のもとが分ってきたと言うから、凄いですね。
その噴出口孔では、水素や硫化水素などの還元物質が、エネルギー源となっている由です。
あと二つも在る生命起源に係る可能性
一つは陸上温泉起源説
海底の熱水噴出口に当たるものが、大陸や安定した島に在り、温泉や間欠泉を吹き出していて、摂氏百度以下くらいの低温で在るとしたら、有機物が合成されやすく、DNAやRNAのような、命の前駆物質を生じていた可能性が否定できないと言われます。
ただ、原始地球に安定的な陸地が在ったという証拠は今のところ見つかっていないと申します。
もう一つは地球外で、生命ないし生命のもとになる物質が宇宙から飛来したとする説です。
宇宙には、アミノ酸や生命体の前駆物質の在ることが観測されていて、実際隕石からも重要な発見が在ると申します。
ただ、では宇宙空間の何処で、そうした物質がどういうプロセスを経て作られているのか、余り議論されていないようです。
ただ、注目されますね。
要は、生命の起源について、地球自体の特異性に限られず、宇宙まで話が広がっていることを関心をもって良いと思えます。
3 深怪魚とは?
深海の暗さへの対応として、発光する魚など、奇々怪々な例から、チョーチンアンコウの様な有名な例まで、本展示は実に多種多様なところを紹介していて、さすが国立科学博物館と思わせます。
でも、決定版と言えば、この深怪魚でしょう。
それは、駿河湾で二千メートルの所から、釣り上げられた怪魚との由、その大きさと奇妙さから、一瞬シーラカンスと思ったと言います。でも、そんなはずはない、では一体何かというわけですね。
俄然、注目あれと言う感じですね。
一応魚名は、セキトリイワシ科の不明種と言う事です。 特徴は、その巨大さにあります。
先ず、マイワシは約二十センチ、主なセキトリイワシ科の魚は精々三十センチで在るのに対し、この不明種は何と百四十センチにも及ぶのです。
要は、新種か否か、とすれば、これは何と名付けたら良く、どう位置づけるのか、今後の調査研究が待たれます。
4 東日本大震災
それは、2011年(平成23年)3月11日発災、日本の地震観測史上最大のマグニチュード9.0を記録しました。地震動は継続時間約六分に及び、大津波が襲い、併せて災害犠牲者は何と二万人近くに達しました。
今回展示の目玉は、この地震による亀裂の撮影だったと思います。
潜水艇しんかい6500は、巨大な特殊船舶の「ちきゅう」から投ぜられ、三人で乗船し、潜水開始、三陸沖の亀裂に至り、撮影しました。夥しい犠牲と破壊をうんだ亀裂は、眼前に在ったのです。
幅一メートル、深さ一メートル、奥行きは暗く何処までも続いていました。
この亀裂が思うと、我が眼は釘付けとなりました。
5 プレートの動き
地震は、大きく分けて、プレートの動きで起きる海溝型と、断層の歪みで起こされる直下型とから成ります。
この度の大震災は、プレート型の巨大地震でした。
このプレートは地球を覆う約十枚ほどの地殻・岩盤から成っています。
そして、地球の中の液状のマントルに浮くようにゆっくり動いています。
この動きの過程で、百年前後の中、変化が起き、大きな破壊と震動が襲います。
これが、巨大地震です。
バラエティーに富んだ展示は、悲しさ、多彩、迫力に満ちていました。
ただ、東京上野の一カ所の由です。
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