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ウォ-ル・ストリート・ジャーナル(WSJ)のやどかり戦略

2026.09.17 Thu

◇データセンターの短時間建設がAI競争で必須という『WSJ』記事

タイトル写真は、最近の『ウォ-ル・ストリート・ジャーナル(WSJ)』日本語版の記事の一部です(2026年9月4日)。「AIデータセンター建設ブームを加速させる新技術 ビジュアル解説--ハイパースケーラーのスピード追求が、時間を短縮させる製品と工法を生み出している」というのが見出しです。巨額の投資をしてAI開発にしのぎを削っている企業にとって、巨大データセンターを1分1秒でも早く建設することが競争上求められています。そのための技術開発が急進展しているというデータセンターのわかりやすいイラストで説明している記事です。

◇『WSJ』が無料で読める7つのメディア

ただし、ここでデータセンター問題をとりあげようというわけではなく、このような興味深い記事が載っている『WSJ』の日本語版が、たとえば『毎日新聞デジタル』をとっていれば無料、言い換えれば追加料金無しで読めてしまうという話題です。このように『WSJ』日本語版を付加サービスとして無料で提供しているメディアは、現在下の表の7つ(6社)です。


◇有料のニュースメディアをとるなら

これらはすべて有料のサブスクと言われる新聞や雑誌のデジタル版とネットメディアです。そして、『毎日✕WSJ ニュースで学ぶ英語』以外はすべて、そもそも<〇〇をとっていればWSJが追加料金無しで読める>というタイプのものです。〇〇をとっている人にとっては相当なお得感があります。
たとえば、スマホで読める無料のニュースに飽き足らない人が従来の新聞系、特に一般紙系のデジタル版をとろうとしたとき、『毎日新聞デジタル』(スタンダード月額1078円)は、『朝日新聞デジタル』(同1980円)、『読売新聞オンライン』が主な比較対象になるでしょうが、内容についての評価は別として、『毎日』がいちばん料金が安いです。その上『WSJ』日本語版が無料で読めるとなるので毎日にとっておおいに差別化要因になります。一般紙という性格に経済の強みを加えるという意味もありましょう。
なお、『読売新聞オンライン』は、紙を月額4800円で購読しないとデジタル版が読めないので、そもそも競争条件が違います。
地方紙の『十勝毎日』は、十勝地方では最大シェアをとっているとはいえ、北海道全体では『北海道新聞(道新)』が圧倒的な地位にあります。そのため、『十勝毎日』にとって、『WSJ』は道新との差別化要因のひとつになるでしょう。
群馬県は関東圏ということで全国紙がかなりのシェアをとっていて、『上毛新聞』にとっては全国紙が競合相手として意識されていそうです。
『ダイヤモンド・プレミアム』は、『日経ビジネス』『東洋経済』のデジタル版が直接の比較対象となります。
『NewsPicks』は「経済をもっとおもしろく」というキャッチフレーズで、動画を多用するなど比較的若い層をターゲットにしています。『日経電子版』(月額4277円)に比べてはるかに安く、経済に関心の強い若年層に向いています。
海外の興味深いニュースや雑誌記事を選んで載せているのが『クーリエ・ジャポン』で、ニュースメディア全般とは異なる独自のポジションを占めています。

◇新たに『WSJ』をとりたいのなら

一方、〇〇(既成の有料デジタルメディア)をとってない人が、新たにWSJを読みたいと思ったら、『毎日✕WSJ ニュースで学ぶ英語』が非常にお得です。何しろ550円でWSJが日本語で読めてしまうのですから。そして、冒頭タイトルバックにあるような「原文(英文)」というボタンを押すと、一瞬にして英語に変わって、英語で記事が読めます。

毎日新聞の主要な記事の英訳とか、WSJの英語の解説などが載っているのですが、むしろWSJが本体で、そこに付いているおまけという位置づけにさえ見えます。

ちなみに、WSJ日本語版を独自に購読しようとすると、キャンペーン価格の時などを除くと、標準で2980円かかります。ですから、『毎日✕WSJ』のお得感がいかに大きいかがわかるでしょう。

◇“やどかり”路線を取る『WSJ』のねらいとは

では、なぜ『WSJ』は、独自の販売に注力しないで、気前のよい“やどかり”路線をとっているのでしょう?それは、『WSJ』が、評価の高いメディアだとしても、またそれが日本語で読めるといっても、やはり日本において独立の有料サブスク読者を獲得していくのはなかなかハードルが高いということでしょう。

“やどかり”路線であれば、おんぶするメディアにとっては有力な付加サービスになるし、『WSJ』にとっては手っ取り早く読者が拡大します。それがたとえ薄利であっても、デジタルなので、部数が増えてもコストはそれに比例しません。ということでWin-Win関係が成立しているものと思われます。

とはいえ、昨今のYouTube動画の全盛に代表されるような「超多チャンネルメディア環境」のもとでは、以上の話は、ニュースをきちんと読もうという限られた層の中のことかもしれません。

 


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